発表会に向けて頑張っているお子さんを、引き続き紹介します。
ゆうたくん(仮名)は、アレンジのアイデアがたくさん出てきます。
「こんな音を入れたらカッコイイ」
「ここは音を小さくしたい」
「ここは目立たせたい」
素晴らしい発想力なのです。
でも、発表会で弾くときは聴いている人に伝えなければいけません。
自分ではいいと思っても、聴いている人に伝えられなければ独りよがりの演奏になってしまいます。
それではせっかく練習してももったいないですね。
だから、レッスンでは
「聴いている人に届けるためにはどうするか?」
と考えるレッスンをしてきました。
具体的には、
「タッチが浅いと聴衆に聴いてもらえないので、しっかり鍵盤の底まで弾く」
「アレンジはテンポをキープできないと台無しなので、メトロノームに合わせる」
ということを徹底してレッスンしました。
ゆうたくんにしてみれば、
「自分ではできていると思うのに!」と悔しそうでした。
「やっとるし!」と反発したことも多々ありました。
でも、独りよがりにならないということにレッスンの意味があるのです。
独りよがりというのは、演奏する本人は表現しているつもりでも、音が小さすぎたりテンポが揺れたりして聴衆に感動が届かないということなのです。
だから、独りよがりにならないための注意は、聴衆に届けるために絶対に必要なのです。
そのことを伝えると、ゆうたくんは次の週には注意点を必ず直してくるのでした。
ゆうたくんのアイデアも盛り込んで、アレンジもその都度変えました。
私としても、頭をひねる時間です。
本当は楽譜通りに弾けばお互いに簡単なのです。
正直、そのほうが私も教えるのが楽で、もっと多くのお子さんに教えて収入を増やすこともできます。
しかし、お子さんのアイデアが出るのが素晴らしいことなのだから、積極的に取り入れたい。
大手音楽教室ではこのような手間暇はかけられません。楽譜通りに弾く方が断然手っとり早いからです。
私は、お子さんがせっかくアイデアを持っているのなら、そのアイデアを形にしたい。
それがお子さんの自信になると信じているからです。
ゆうたくんはアレンジすることで、創造力を発揮して自信を持つことと、人を納得させる視点を学びました。
発表会ではどんな演奏を聴かせてくれるか楽しみです。