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「茶の本」  

岡倉天心 著 

岡倉天心は、

明治時代の美術に関する指導者、思想家です。

芸術鑑賞についての文章が素晴らしいので、

引用したいと思います。

 

~現代の芸術家は、技術に溺れるあまり、

滅多に自分を超えるということがないのだ。(略)

自分のことしか歌うことができないのである。

彼らの作品はより科学に近づく代わりに、

人間性からは遠ざかってしまった。

日本では昔から

「うぬぼれ男には惚れられない」というが、

そうした男の心には、

愛を受け入れるような余裕がないのだ。

芸術においても同様に、

自己中心的な虚栄というものは、

芸術家、鑑賞者いずれの側であっても、

共感を育むうえで致命的な障害となるのである。~

 

現代でも、

技術偏重で、心を伴わない演奏も多い中、

音楽本来の在り方を示唆しているのではないでしょうか。

また音楽に限らず、

人間が陥りやすい盲点、虚栄の悪影響についても、

端的に述べているのではないでしょうか。

さらに言うなら、

自己中心的な視点に傾いてしまった今、

その弊害についても述べていると

とらえることもできるのではないでしょうか。

 

目に見えるものだけを追い求めるのは、

もう限界だと思います。

見えるものはすべて、こころの在り方に関わっている。

見えるものを通して、

見えないものを見る努力をしたいものです。